この記事の要約
今回の記事では、マーケットの懸念事項となっていた米債務上限問題は、債務不履行に陥る期限とされた6月5日を前に、バイデン大統領が「財政責任法案」に署名することで一応の解決を見た。 しかし、これにはさまざまな規定があり、それらを勘案すると年末までは目が離せない。 とはいえ、これにより当面は、政府による財政緩和によって金の高値は維持されることになる。 つまりは根本的には「金は買い」という方針に変更なしということ。 では、具体的に見ていきましょう。米債務上限問題は本当に解決した?
今回のマッカーシー下院議長とバイデン大統領の尽力による債務上限問題回避の法案を「財政責任法案」といいます。 内容は、債務上限の効力を1年停止することがメインになります。 下記をご覧いただければおわかりになるでしょう。 まず、アメリカの債務の推移のグラフです。

FRBの「金融」緩和と米政府の「財政」緩和
まず、債務上限が撤廃されたということは、政府からの歳出、支出が増えることを意味します。 つまりドルの需給において、FRB(連邦準備制度理事会)がコロナショック以降、金融緩和を激化させていることは今まで散々に解説してきました。 以下のグラフは、FRB緩和の状況の推移です。
財政緩和によって金の高値は維持
以下のグラフのとおり、アメリカ政府の支出はコロナショックの2020年2月以降増加しており、今回の結果を受けて、さらに増えることになるわけです。
FRBの引き締め要因
緩和とはドル供給を増やすことですが、他に金利を下げるという側面もあります。 下記は、FRBの金融緩和に黒点線でFFレート(政策金利)を添付したグラフです。

根本的には「金は買い」という方針に変更なし
上記をまとめると、2023年6月以前 2023年6月以降 金融緩和 引き締め 引き締め 財政緩和 上限による引き締め 緩和となります。 2023月6月以前は、金が新高値を取ったこともありましたが、実際、FRBは引き締めをしており、政府も借金が上限に達したことによって引き締め行っていました。 ゆえに本来は新高値を取れる状況ではなかったので、この高値は需給によるものと説明ができます。 ところが2023年6月以降は、FRBが引き締めを行っても政府は緩和的になるので、条件が変わります。 つまり、今まで金の価格はドルや金利では下がり気味だったのが、今度は政府が緩和をすることによって、上昇することになります。 本来は金はここから買い、と言いたいところですが、需給要因にも変化が出てきているので、それは次回解説します。 ただ根本的には金は買い、という方針には変更はありません。