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新型コロナウイルスはオミクロン株が日本では思ったほど猛威を振るわず、「ああ、よかった」と胸をなで下ろしている方は多いでしょう。
しかし経済は今までが好調すぎた分、もっと酷い状況になる可能性が高いように見受けられます。
今回はその理由を金との関係を交えて解説します。
12月16日のFOMCとテーパリングの本当の意味
12月16日にFOMC(連邦公開市場委員会)が終了し、テーパリングを月150億ドルから300億ドルに倍増させ、さらに来年3月から利上げを始める可能性を示唆しました。
このテーパリングを日本語にすると「金融緩和の減少」を意味しますが、これを文字通りに受け取ってはいけません。
以下のアメリカの金融緩和額のグラフをご覧ください。

11月3日にテーパリングの開始を発表していますが、11月当初は緩和を増やし続け、11月末に帳尻を合わせているかたちで、12月5日には再び増やしています。
つまりテーパリングとは、正確には金融緩和の増加率の減少なのです。
わかりやすく言えば、金融緩和は続いています。
お金のばらまきの量を減らしているように錯覚してしまいがちですが、それは違うのです。
今回のFOMCを受けて…
12月16日のFOMCの結果、市中には相変わらずお金があふれ続け、物価を押し上げる買い占めマネーはまだまだ年内はあふれ返ることになります。
その結果、このFOMCと同日に発表されたNY連銀のメトロポリタン指数は以下のようになっています。
まず、以下はエンパイア指数です。

続いてエンパイア指数、新規受注指数になります。

このグラフからわかることは、製造業の指数は上昇し、その原因である新規受注はさらに増加しています。
この意味は、消費者は物価高(お給料が物価高以上に上がらない状態)によってモノが買えない状況、裏を返せばモノが売れない状況が今後も続くと予想されるのに、企業は生産を増加させているわけです。
こんなおかしな話はないゆえに、これをバブルと呼ぶのですが、アメリカの中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)は、それを認めるとすぐさま利上げを行わなければならないので認めません。
なぜ利上げをしないのかといえば、雇用が最大化していないからです。
コロナ前と比較して就業人口はまだ少ない状態であり、この状態で利上げをすれば、企業はコスト増によって人員を雇用しづらい状況が続きます。
その結果、今順調に増えている雇用が一転、失業者が増える可能性があるからです。
インフレのゆくえと「インフレに強い金」の成り行き

上記を踏まえた上で、今回のFOMCでは来年3月以降の利上げを示しました。
つまりインフレの原因である金融緩和は3月まで続くわけですから、インフレが終息する見通しはないということです。
その間、企業はおそらく安いうちにモノやサービスを買おうという消費者に支えられて、製造を拡大させますが、ここで物価が来年の3月まで上昇すると、お給料の上昇が物価に追いつけずにパタりと売上が止まります。
その時には企業は過剰生産の在庫を抱え、目先の現金が欲しい企業はダンピング競争に突入するわけです。
こうなると株価は急落、そしてドルを下落させればさらに物価高が進行するので、ドル高を維持させるほかありません。
金利はインフレ進行で高い状態です。
となると「インフレに強い金」神話は崩壊し、ドル高、金利高で金は売られるというシナリオになります。
このインフレはいつ終わるのか?

昨年のマスクの高騰は、中国から貨物船が入港してひと度値段が下がり始めると、つるべ落としのように下がりました。
マスクが実際に上昇していたのは、一部の人が買い占めを行っていたことが原因の一つであることは間違いようのない事実です。
結局その解消は、代替製品が数多くあったことによります。
今回のインフレも、一部の人の買い占めによってサプライチェーンの崩壊が起こりました。
ところが今回は代替品の手当てもできないくらい、買い占めが広範に起きていることが問題です。
なぜ買い占めが起こるのかといえば、企業に余裕の資金があり余っていることに原因が求められます。
だからFRBはテーパリングを行い買い占め資金の枯渇に努める、方向性としては正解だという識者も多いでしょう。
このままではハイパーインフレに!?

ただし物価は、11月からテーパリングを始めて下がるどころか上昇しているのが実態です。
その原因は、金融緩和でカネ余りが解消しても、今度は買い占めを行う業者がその在庫を担保に融資を行うからです。
一般の企業は、今後の売上という不明確なものを担保にするわけですが、在庫を担保(買い占めをした半導体など)にすれば、担保割れのリスクは極端に減ります。
つまり銀行側からすれば、在庫を担保に融資を求める企業の方が優良事業者になるのです。
では、その融資を行っている間に価格の低下が起こったらどうするのか、それは明快で、銀行は融資を増額してさらに買い増しを推奨します。
こういう状態になったら、もはやインフレは高進するだけでどうにもなりません。
つまりハイパーインフレに向かっていく可能性があるのです。
ハイパーインフレを抑える方法はないのか?

ハイパーインフレを抑える方法は明確ですが、やる側に根性と気合いがあるかが問われます。
つまり、金利を思いきり引き上げればいいのです。
しかし、そんなことをすればせっかくここまで上昇した株価は崩壊、株価が急落すれば再び資金調達が困難になり、また金融緩和を拡大させなければいけません。
企業の業績が下降すれば、雇用はレイオフを行わざるを得ず、つまりは元の木阿弥です。
そこで金融緩和を拡大すればまたインフレが進行し、その間に一気に雇用は急減、大不況に陥ります。
まだ対処できるうちにさっさと利上げをすればいいのですが、来年に中間選挙を控えるバイデン大統領は、株価の急落は民主党の大敗につながるので、できるわけがありません。
頼りにならないパウエルFRB議長

頼りになるのはパウエルFRB議長だけですが、トランプ時代からある意味忠臣でした。
おそらく今回もバイデン大統領の言いなりになるでしょう。
先月、パウエル議長では議会上院での指名ができない状態なので、その後任人事問題が浮上しましたが、結局後任はパウエル議長、副議長には民主党員が選ばれました。
つまりバイデン大統領の援護で議長に再任できたパウエル議長は、その恩義を感じて大統領に逆らえられません。
そんなパウエル議長がバイデン大統領や民主党の意向を無視して、大幅な利上げや予想外のサプライズ利上げができるわけがないでしょう。
なぜなら利上げは株式市場の崩落につながり、雇用の悪化を推進するからです。
予定通りに来年3月に利上げをするのでしょうが、それでは過去のデータから見てインフレは終息しません。
予想外の利上げという方法以外で、過去にインフレは解決しなかったのです。
「戦争」という最終選択肢も…

上記はあくまでも平和的な解決方法で、過去には戦争という選択肢もありました。
今の時代に戦争は論外ですので、サプライズの利上げしかできないのですが、できたとしても中間選挙終了後、それまでにアメリカ市民の暴動が多発するでしょう。
そういう事態が起こってから、サプライズの利上げになるのでしょうが、それでは遅すぎです。
このインフレの被害は先送りにすればするほど深刻になります。
つまりコロナが万が一収束しても、今度は経済の大不況が待っているということです。
そして、そのインフレが終われば今度はデフレ不況です。
この記事のまとめ
今回の記事では、12月16日に終了したFOMCでテーパリングの拡大が決定したが、このテーパリングとは正確には金融緩和の増加率の減少であり、実際には金融緩和は続いている。
また2022年3月以降の利上げを示したが、裏を返せば今のインフレの原因であるこの金融緩和は来年3月までは続くということ。
金融緩和でおカネ余りの企業は、金融緩和が終わっても、溜め込んだ在庫を担保に融資を求め、また買い増しを続けるので、このインフレはハイパーインフレへと発展する可能性が濃厚。
その状況下では、ドル高と金利高で金は売りに。
しかも、そのハイパーインフレのあとに待つのは、デフレという最悪の状況。
新型コロナから始まった闘いは、まだまだ終わらない。
こういう内容の記事でした。