金の価格構成要因は【1】ドル、【2】金利、【3】GDP(国内総生産)ですが、時にはドルに強く連動したり、また時にはより金利に連動したりと状況によって変化します。今回は、この価格変動要因の主体に変化が生じたようですので解説します。
9月15日にドル建て金が下抜け!
下記の日足チャートのとおり、ドル建て金価格が直近の6カ月の安値を下抜けました。
チャートは移動平均線の方向性を見ればよく、その平均線は10、30、100と下がり、300も若干下方向を向いています。
テクニカル的にこの形であれば、売りは決定的なところになります。
つまり前回のテクニカル分析でお伝えしたように、1500ドルを目指して動き始めることになるでしょう。
https://kinkaimasu.jp/lounge/2022/09/20/gold_market_ahead_of_other_financial_markets/
ドル価格という要因
今までのドル建て金価格は、ドルの上下動を中心に動いてきました。
下記は金(緑線)の価格にドル(青線)を重ねたグラフです。
ドルは左軸で値を反転しています。
今年3月以降重なったような動きになっており、金がドルと連動していたことが明白です。
金利と金価格の連動はどうか?
下記のグラフは金(緑線)と金利(青線)になります。
青線の金利は左軸で、前掲のグラフ同様、値を反転してあります。
ドルと同様に3月くらいから金が上昇すれば金も下がるという形に一応なっています。
ただ、ドルほどは重なり合ってはいません。
ゆえに連動は今まで主にドルと金の価格が連動していたのであろうと推測することができます。
金価格を動かす主体が変化
下記は、ドル(青線)と金利(緑線)の6カ月間の動きです。
金利の計算式は「ドル×金利」ですので、ドルと金利の動きにはある程度の相関があり、ところどころ大きく重なったり離れたりしています。
これは、ドルの価格が下がるときには金利も下がっていますが、7月のようにドルの価格が上昇しているのに、金利が下がっていることがあるということです。
この意味は、ドル自体は上昇しているが金利は下がっているという状態が、ドルは強いけれど金利は下落したという意味になります。
つまり上昇幅では、ドル>金利になっているのです。
そして、変動幅も金利よりもドルの方があったから今までドルに相関していました。
前記のチャートが6カ月だったのに対して、下記は1カ月にサイズを小さくしたチャートです。
緑線の金利は上昇しているのですが、青線のドルは下落しています。
つまりドルと金利では金利の上昇幅の方が大きく、ドルの上昇幅が小さくなっているのです。
9月15日、ドルはそんなに上昇していないのにドル建て金価格は下抜けました。
これは、金の価格主導のメインがドルから金利に移行したことを意味します。
つまり今後、金の価格を占うためには金利を主に見なければいけないということです。
なぜメインの変動要因が金利に変わったのか?
金利が上昇するのは、9月22日のFOMC(連邦公開市場委員会)によって金利が0.75%上昇させられることが見込まれているからです。
つまり金利は上昇見込みなので、金利の上昇幅が大きいのです。
一方でドルの上伸の幅が狭いのは、ユーロが利上げを行ったからになります。
ユーロは金利も安く、本体も安かったのですが、金利が上昇し始めたのでユーロが一方的な弱さではなくなったことがドルの上伸が狭い理由になります。
この結果、金の価格は金利主導になっているのです。
注意したいのは、金利は9月22日にアップするでしょうが、問題はその幅です。
サプライズで1.00%の利上げをする可能性もあり、その場合、金利は急騰するでしょうが、コンセンサス通り0.75%であれば金利は急落する可能性の方が高いのです。
理由は、0.75%の利上げをすでに金利市場は織り込んで、むしろもっと高い状態にあるからです。
そのときまで金が下がっていた場合、勢いよく戻る可能性があります。
円建て金価格のゆくえ
円建て金価格は、今までドル円の円安によって上昇しましたが、今後はそれほどの円安は見込めません。
なぜなら、ドルの上伸がユーロの強さによって緩和されるからです。
ユーロが今後も利上げを続け、最終的にユーロの方が強くなった場合にはドルは安くなります。
その場合は言うまでもなく円高です。
世間はまだまだ円安と言っていますが、円安の環境は確実に変化していることを忘れないでください。
おそらく介入など行わなくても円高になるでしょう。
円建て金価格は最終的にはドル建て金価格の方向性に合わせると記してまいりましたが、円高転換になたっときに円建ての金は大きく下がる可能性がある、ということです。
この記事のまとめ
今回の記事では、【1】ドル、【2】米金利、【3】GDPという金価格の変動要因の中でも主要因が、9月に入って【1】ドルから【2】金利に移ったことを確認。
この背景にあるのは、9月22日のFOMCで0.75%の利上げが見込まれているということ。
そしてユーロが利上げを行ったことで、ドルに対して一方的な弱さではなくなったこと。
これを受けてドル円相場も自動的に円高方向へと転じ、円建て金価格はドル建て金価格に修練するように大きく下がる可能性大!
こういう内容の記事でした。