ドル円相場が1ドル140円台にまで突入しました。
今回はその理由と今後の展望に加え、円建て金価格への影響について考えていきます。
ドル円相場の円安の背景とは?
この円安は、金利が上昇するアメリカと、金利を上げないと明言している日本との金利差によって進行しているという声が大きいです。
確かにこれは一理あるのですが、実際、日米の金利差が拡大しても円安にならないことは多々あり、本当にこれでよいのかという疑問が残ります。
当コラムでは、そういった皆さんの疑問の声に答えを示します。
まず、以下のチャートをご覧ください。
よく似た動きだと感じた方は、何と何を比較したチャートだと思いますか。
実は、ドル円とドル人民元の過去6カ月間の動きなのです。
つまり、人民元とドル円は同じような動きをしているのです。
人民元相場の推移
この背景を示していきます。
9月6日付の以下の記事をご覧ください。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM059AN0V00C22A9000000/
引用元:日本経済新聞
中国が外貨預金準備率を引き下げており、これは今年の4月以降、2回目になります。
ここ1年間の人民元相場の推移を見てみましょう。
今年の4月に外貨預金準備率を引き下げた際に、人民元の大幅安を招いています。
そして今回は、9月15日から外貨預金準備率を再び引き上げると言っているのです。
ドル人民円とドル円が連動しているのであれば、ドル円は現在の143円水準以上に円安になることを示します。
なぜ中国は外貨預金準備率を引き下げたのか?
先ずは外貨預金準備率というものをきちんと理解していないと、この引き下げの意味が理解できません。
例えば外貨で100万円の出金要請があったとして、銀行に100万円がなけければ取り付け騒ぎが起こります。
そのために、金融規制当局が金融機関に対して外貨預金の払い出し資金を常に準備しておく規制を敷いているのです。
その割合を今回、8%から6%に引き下げると言っています。
この結果、銀行は差額2%の資金を現金として自由に使うことができるようになるのです。
銀行は基本、預金を集めて利子を提供し、融資で利息を徴収するという差益で儲けています。
これだけ中国国内でコロナ感染が拡大すれば、融資希望が殺到するのは必然で、融資に必要な現金が不足気味になります。
そして今回の準備率の引き下げによって、融資枠が拡大すると考えるのが自然です。
つまり企業はコロナで休業になっても、融資でなんとかしのげることになります。
これは実質上の金融緩和処置なのですが、これを人民元防衛だの、引き締めだの解説する方が非常に多いものです。
中国のコロナ感染状況
上記の人民元相場の推移を確認しながら、以下の記事を読み進めてください。
8月10日あたりから人民元安相場が続いていますが、この時に何があったのかを見てみると以下のようになります。
https://jp.reuters.com/article/health-coronavirus-china-cases-idJPKBN2PH0DG
引用元:ロイター
上記は8月11日の記事になりますが、ロックダウンが3日間実施されています。
今回の人民元安は、以下の記事で証明されます。
https://news.yahoo.co.jp/articles/73f29890e20780ea7c908d7d2ca3785c87824f08
引用元:CNN
中国の33都市でロックダウンが行われているとのことです。
中国のコロナ感染拡大→ロックダウン→人民元安→日本円安という流れが続いていると考えるのが合理的です。
つまりドル円の円安は、中国のロックダウン次第と言えるのです。
円建て金相場への影響
円安だと、円建て金価格が上昇します。
例えば、9月5日のドル建ての金価格は0.5%の下落でしたが、ドル円は1.8%も円安になりました。
その差1.3%ほど円建ての金は上昇する計算になります。
ドル高・金利高を受けてドル建て金価格は下落していますが、ドル建て金価格÷31.1035×ドル円レートで計算すると、円建て金価格が上昇するのは必然です。
ただし円建て金価格は、いつかはドル建て金価格に収れんするのがパターンになります。
この記事のまとめ
今回の記事では、ドル円相場が大幅な円安となっている理由は、一般に日米の金利差にあると言われているが、実はドル円相場がドル人民元相場に連動していることを確認。
そしてこの人民元安の背景には、4月とこの9月に行われた中国の外貨預金準備率を引き下げがあることがドル人民元相場の推移から見て取ることができる。
この外貨預金準備率の引き下げは、実質的な金融緩和で、その背景にあるのは新型コロナ感染拡大によって相次ぐ中国国内でのロックダウン。
すなわち、都市封鎖の影響による企業の融資需要を満たすための措置。
円建て金価格が下がるのは、中国のコロナロックダウン次第と言える。
こういう内容の記事でした。