今回はドル円相場を分析し、円建て金価格の展望を解説します。
この記事の要約
今回の記事では、ドル円レートの分析と円建て金価格の展望を解説。
- 円とドル、それぞれのファンダメンタルズ分析は?
- 円とドルを比較してみた時に見えてくることとは?
- 今後ドル円相場はどう動き、円建て金価格はどう動くか?
では、見ていきましょう。
ドル円レートのチャート分析
USDJPY_chart_analysis
下記のグラフは2024年7月1日から2025年5月2日までのドル円レートの推移で、オレンジ色の線が実際のレート、青線が理論値のレートになります。
ここで言う理論値とは「ドルインデックスの前年比÷円インデックスの前年比」です。
去年7月にはオレンジの線が示す実際のレートと青線が示す論理値の乖離はあまりなく、トランプ関税などの混乱によって今年4月頃から乖離が大きくなっています。
また、去年の7月はオレンジ線の方が上で、そのオレンジの線が青線よりも下に入ると円高になりました。
去年11月の米大統領選挙の前後でも、同じような現象が起こっています。
つまり実際のレートと倫理値の位置関係が逆転した時、円高・円安の転換が行われるということです。
現在は大幅にオレンジ線(実際のドル円レート)が上にあります。
つまり青線が逆転しなければ、円安方向は変わらないでしょう。
円のファンダメンタルズ分析
ドル円レートの計算式は「ドル÷円」であり、それぞれ中身はドルの価値+金利、円の価値+金利になります。
では、2024年7月1日から2025年5月2日までの円単体の価値を示す円インデックスの推移を見てみましょう。
青線が円金利、オレンジの線が円+金利、緑色の線が円単体の前年比になります。
いくら円の金利が上昇したといっても、円の価値そのものと比較すれば変動はわずかであることがわかるでしょう。
つまり円の価値変動は金利にあるのではなく、円の価値そのものにあるのです。
円の価値とは、例えば日本のGDP(国内生産)成長率が世界と比較して大きい場合に上昇します。
しかし、現状の生活実態を見ればありえないことはわかるはずです。
なぜ円の価値が上昇したのか?
では、円の価値が上昇したのはなぜでしょうか。
その答えの一つが関税問題で、米ドルが回避されている結果としてのドル安からの円高です。
ほかに円の需要が増えたことも理由にあります。
日銀のバランスシート、言い換えると通貨供給量をご覧ください。

円の供給は増え続けてきましたが、最近は減少傾向にあります。
今までは、供給に見合う需要がないから円安が進行しました。
ところがここ最近は円の供給が増え、ドルが減価しているから円高になったということです。
加えて日銀が金利を上げているので、円の需要も増えた結果、円が強くなったということになります。
ドルのファンダメンタルズ分析
次に2024年7月1日〜2025年5月2日までのドルの金利(青線)とドルインデックスの前年比(緑線)も見てみましょう。
円との違いは、金利がプラス圏内にあるとドル高傾向になり、金利がマイナス圏内にいくとドル安になる点です。
すなわち、ドルは金利に左右されていることがわかるでしょう。
ゆえに、ドル円は日米の金利差で動くということが実しやかに言われるわけです。
ここ最近のドルの下落は、金利安から発生していると言うことができます。
ドル供給の現状は?
さらにFRB(連邦準備制度理事会)のバランスシートで、ドルの需給を確認してみましょう。

コロナ禍でドル供給が増え、ここ最近はインフレ対策で供給が減ってきています。
すなわちドル高です。
円相場だと金利と円の関係は希薄ですが、金利とドルが同じ方向性に向く傾向があるので、需給がひっ迫していてもドル安になりやすいのです。
円とドルを比較してみると…
上記を整理してみましょう。
まず供給について、日米とも最近は通貨供給量を減らしていますが、中長期的には日本は増加、アメリカは減少になります。
需要については、ドルは関税問題で忌避傾向、円は若干の景気回復傾向からの需要増です。
トータルで考えると、アメリカは供給も需要も減少するが、需要の減少の方が大きく、日本は供給減で需要は上昇です。
金利については、アメリカは利下げ傾向、日本は利上げ傾向になります。
需給 米国 日本
マイナス →ドル安 プラス →円高
金利 米国
金利安 →ドル安 金利高 →円高
こうなると、今の円高はファンダメンタルズの面から見ても正しいことになります。
ただし、円の供給面については注意が必要です。
短期的に通貨供給は減っていますが、日銀は超緩和的な金融状況を当面続けるとしています。
つまり、行き過ぎた円高には歯止めがかかります。
具体的な円建て価格の予測
ドル円レートが1ドル140円と150円のケースを例に取り、ドル建て金価格が3500ドルであるとして、円建て価格をシミュレーションしてみましょう。
1ドル140円では1万5753円くらい、150円で1万6879円くらいになります。
ドル建て価格3500ドルで為替レートが10円違えば≒1100円の違いが出る、すなわち1円だと110円の価格差が出ることを覚えておいてください。
ドル円が円安に行くことはわかっているので、150円まで行けばいくらになるのかを考えるのです。
そしてその間、ドル建ての金価格が変わらずであればいくらの違いが出るのかを見てほしいということです。
ただし、ドル建て金価格は3000ドルまでの調整中になるという考えを示したばかりです。
具体的なイメージを挙げてみましょう。
現在 少し先 もっと先
金価格 3200 3100 3000
ドル円 142 150 140
円建て価格 1.46万 1.49万 1.35万
仮定ではありますが、このようにマーケットが推移すれば、価格はこう変化するということです。
現時点ではドル建ての金価格は下げ予測、ドル円は円安予想なのであまり価格は変わらないでしょう。
ただしドル建ての価格が大きく下がると、円建ての価格も大きく下がることになります。
この記事のまとめ
以上、現在の極端な円高は、
1. ドル安
2. 円の供給減
3. 上記に伴う円需要の増加
によって起こったと考えることができます。
ドルの動きは以下のとおりです。
1. ドルの動きは金利次第
2. 関税問題でドルからの忌避が起こっている
3. 需給は引き締め傾向
つまり現状では円高となるが、長期的には円安傾向。
具体的な円建て金価格の展望については、前項の「具体的な円建て価格の予測」を参照してください。