今回は11月5日の米大統領選挙の終了後、金価格が上昇した背景にいると考えられる投資勢力についてです。
この記事の要約
今回の記事ではETFの買い残の推移などから、昨年11月の米大統領選以来の金価格上昇を担った主体を推測。
- 米金利とETFの買い残の関係性に見える、通常とは異なる矛盾点とは?
- 北米勢と欧州勢とアジア勢のETFの買いを比べてみると…?
- 他に米国資産や株、ビットコインなども買っていると思われる、この金高を支えている勢力とは?
では、見ていきましょう。
ETFの買い残の推移
下記はETF買い残の推移です。

ご存知のとおり、米大統領選挙の投票日は昨年11月5日でした。
その日を境にETFの買い残が大きく売られていることがわかります。
主な売り手は水色の欧州勢であったようです。
そして北米、つまりアメリカの投資家は多少買い越していることがわかります。
ETFの買い残と金利の動きの経緯
ETFの買い残は、ほとんど金利の状況によって動きます。
すなわち金利が上昇すれば売られ、下落すれば買われます。
金利とETFの関係は、下記の2024年11月1日から2025年1月10日までの金(青線)と緑が米10年債利回り(緑線)でご確認ください。

11月5日の米大統領選後の11月7日、FOMC(連邦公開市場委員)で利下げが決まり、金の上昇が僅かなのはETF残が急減しているのです。
その後、大きくETFが急減した後の翌週、その他の投資主体によって金の買いが行われました。
ところが金利が反転上昇しているで、米大統領選挙後に金利が大きく下がっても、金の価格がなかなか上昇しないという事象があったことがわかります。
ETFが大きく売り越しになったことが主因だろうと想像が尽きます。
その後、金利が上下動しますが、一度終わった相場なので、金は売られたと言えるでしょう。
そして問題は、12月の23日以降に金利が上昇しても、金の価格も上昇していることです。
金価格上昇の背景に中国人投資家の影?

ETFは通常、金利が上昇すると売り傾向になるのに、金の価格は上昇しています。
12月20日の大きな金買いの主体は北米や欧州勢ですが、翌週の12月23日以降に大きく買っているのはアジア、おそらく中国勢だろうと予測がつきます。
ETFでは中国勢が買っていることになっていますが、昨今の人民元安で中国内の投資家が米国資産や株、ビットコインなども買っていると思われます。
よって現物の金も中国政府ではなく、中国の投資家が買っていると予測がつくのです。
ちなみに中国の国内投資家とは、そのほとんどが中国共産党の幹部でしょう。
政府が公金で金を買うのと、共産党幹部が私的なお金で金を買うのとでは次元が異なります。
地域別ETF購入残の推移を見てみると…

改めて冒頭に提示したETF購入残の推移を地域別で見てみましょう。
緑色で示されたアジアの幅が増えていることに注目です。
この緑は日本人の可能性も否定できません。
しかし昨今のビットコインや米株が人民元に左右されていることを勘案すると、中国人の可能性の方が高いと考えられます。
2025年の金は買いか?

これまでこの金の急騰は、昨年6月までの大きな買い手は中国の中央銀行。
そして今回は政府筋ではなく、中国の投資家の買い手が登場したことによって、2023年から買いの状態が続いていると言えるでしょう。
ただし金価格の上下動の基本はドル高・金利高では売り、ドル安・金利安では買いです。
この基本に反した金の買い付けは、金の歴史を振り返ると必ず大きな損切の結果となってきたことに注意が必要です。
この記事のまとめ
以上、ETFの買い残の推移や金利との関係を見てみると、明らかに価格の上昇に矛盾を抱えるケースがあることがわかる。
そしてその矛盾した動きの背後には自国の経済、ひいては通貨である人民元を信用できなくなった中国人投資家の金買いがあると予想ができる。
要注意なのは、基本のドル・米金利と金価格の関係性に反した動きは、大きな損切になるのが必然。
今回もそうなるでしょう。
という内容の記事でした。
次回は、2025年の金市場にこれに相対する新たな売り手が登場する可能性について解説します。