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2020年6月、北朝鮮による拉致被害者である横田めぐみさんの父親が鬼籍に入られ、片や北朝鮮は開城工業地区に韓国が建てた南北共同連絡事務所を爆破しました。
隣国であるのに謎だらけの北朝鮮。
今回はわかっていることだけを記し、今後の展望をひも解いてゆきます。
金正恩の生年の謎とスイス留学

生年月日を公表していない金正恩ですが、なぜか1984年生まれになっています。
これは彼が若いころに留学したスイスの大学の学年次からの推測です。
この辺はメディアでも報道されていますが、留学時にはバスケットボールに熱中していたことが判明しており、今でもその情熱は衰えていないといいます。
しかし、留学時は北朝鮮の偽造パスポート、しかも外交官の息子として入国しました。
当然名前も偽名で、当時の写真もほとんど残っていないことから本当に本人なのかよくわからない状態です。
ただ、振る舞いやバスケットへの情熱、そして当時の同級生に問い合わせたところ、ほぼ本人と特定されています。
また、最近では妹の金与正が代わりに声明を出していますが、結婚さえ公表していないのに、メディアでは子どもがまだ若いので妹を前面に押し出していると報じています。
金正恩の生い立ちの秘密

これほどまでに北朝鮮が金正恩の生い立ちや実生活を隠すのには理由があります。
彼の父親である金正日の奥さんの問題です。
マレーシアで金正恩の兄、金正男が暗殺されましたが、彼は異母兄弟で母親が違います。
金正恩の母親は実は大阪出身の在日朝鮮人で、名前を高英姫と言います。
大阪では普通に工場勤務をしており、北朝鮮に帰る際に金正日に見初められて結婚したというのが確証はないですが事実のようです。
この金正恩の母親が北朝鮮では絶対に知られてはいけない存在であり、ゆえに金正恩の生年月日さえも秘密にされていると言われています。
参考までに、高英姫のお墓はいまだに場所さえも秘匿されており、北朝鮮の民衆に知られてはいけない公然の秘密となっているようです。
日ごろから「米帝」、「日帝」と悪口を言いまくっている北朝鮮の指導者が実は在日朝鮮人の子ということは、何としても知られたくない事実でしょう。
崩壊する北朝鮮の配給制度

北朝鮮は建前上社会主義で、その理念を広めるために建国されたとしています。
しかし、昨今の国連やアメリカの制裁によって、社会主義の根幹である配給制度が崩壊しているという伝聞が存在し、平壌では市場経済が一部の金持ち層によって導入されているといいます。
国内の工場は電力不足と資材不足によってほとんどが粗悪な商品となっており、人民が生活できるようなレベルの商品は製造できません。
そこで一部の富裕層が密輸等によって得た商品で、日本風にいえば闇市が存在しています。
マーケットは違法ですが、配給制が崩壊した以上、労働党はそれを見ないフリをしている形になります。
このマーケットの拡大が経済の疲弊とともに拡大し、国を支えている構造です。
貧富の格差と閉鎖的監視社会

一方、あまり裕福ではない人民が貧困と飢餓に苦しむ状況は昔から変わっていません。
また、携帯電話の普及率は平壌では80%以上になりますが、外国との連絡やウェブの閲覧はできないようになっています。
加えてGPS機能があり、誰がどこにいるかは当局が監視され、電話も盗聴されています。
平壌では日本人もビックリ、コーヒーが1杯700円もし、一部の人たちにしか飲めないのは当然のことです。
このように平壌ではマーケットが存在し、そこに闇取引、例えばビットコインの流出などはよく北朝鮮の仕業と言われますが、その手の人間が多くいることも確かです。
たばこやお酒の密造、密輸も昔から。
ですから北朝鮮の一部の人たちは中国の富裕層同様にものすごく裕福ですが、中国の比ではないくらいの貧富の格差が存在します。
若さゆえの恐怖政治

北朝鮮は権威体制という金一家の独占体制です。
金日成、金正日まではアメとムチでの治世が一般的な体制維持方法でしたが、金正恩になってからは恐怖政治に変わっています。
すなわち、金正恩に逆らう人間は有無を言わさず処刑されている状態です。
父である金正日から後見人として指名された実質のナンバー2を張成沢を反逆の罪で公開処刑しました。
しかも本人だけではなく一族郎党ことごとく公開処刑で、その数は200〜300人と言われています。
金正日の政権時には側近の処刑は隠れて執行され、また庶民が忘れたころに執行したのですが、金正恩は公開、しかもすぐさま処刑しました。
彼がまだ36歳で若く、自信のなさがこういう行動に走らせているという解釈が一般的です。
金王朝の政治体制

北朝鮮で何が行われているか端的にいえば恐怖政治、そして金正恩への絶対的な忠誠の強要です。
人事はすべて金正恩にあり、平気で二段階以上の降格や逆に抜擢もあります。
ただ、金正恩には軍歴がなく、金正日時代から仕えてきた側近幹部は朝鮮戦争などの軍歴があり、これを降格させて軍務の経験のない若手を抜擢しているので、内部崩壊寸前ということです。
この軍歴がある高齢の幹部が反乱を抑え込んでいるのは、先に述べた張成沢と一族の公開処刑です。
外交官などの亡命が一昨年だけで年間70人以上もいるのは、いかに見ても異常です。
日本の外交官が海外に亡命した話など聞いたことありますか?
自分に逆らう人をことごとく処刑してしまったことにより、信用できる側近がほとんどいなくなったことが妹の金与正が出てきたことの背景と予測されます。
韓国が飛ばしたビラ爆弾の威力

北朝鮮が行った南北共同連絡事務所の爆破は、韓国側がまいたビラが原因だと言われています。
このビラに金正恩の悪口がいっぱい書かれていたことが北朝鮮を刺激したと言われており、実際に北朝鮮には相当なインパクトがあったと思われます。
理由は、金正恩時代になって5年の懲役だったビラまき行為が10年の懲役に厳罰化されているからです。
平壌の街では、先代の金正日のことを「将軍様」と敬愛を込めて呼ぶ人がほとんどだったらしいですが、金正恩のことは呼び捨てで「金正恩」と呼ぶ人が過半らしいです。
いつどこで盗聴されているかもわからない状態で呼び捨てにする人が多数ということは、コントロールが効いていない証拠にもなります。
どちらにしても北朝鮮では体制批判はタブーであり、ビラ一枚でも大ごとにしなければいけない事情があるのです。
あの爆破で韓国は北朝鮮に向けてビラを配布などしなくなるでしょう。
参考までにそのビラにはチョコレートやアメなどがついており、それを目当てに皆こぞって拾うらしいです。
つまり、ビラの内容よりもお菓子のほうが人民にとっては大事なのです。
金正恩死亡説の真偽

側近にも恨まれるくらいの金正恩ですので、本当に生きているのかどうかも怪しいところです。
どう見ても、最近公開された姿は影武者と思われます。
金正日のときには影武者が少なくとも3人いたことが確認されています。
あれだけの肥満体で、表に出るたびに太っていくのですから、影武者の苦労も大変なものでしょう。
その上、韓国や中国と同様に北朝鮮は強烈な儒教社会です。
すなわち、先代が後見人とした張成沢を情け容赦なく処刑し、一族郎党も銃殺した親不孝者です。
昨今も金日成の法事に出席しないというような人心が離れる親不孝をやっています。
これらの事実を勘案すると、コントロールを失っている可能性が高く、金正恩が表に出てこないのは妹が後継者だからではなく、暗殺の危険が高まっていると考えるのが妥当でしょう。
米大統領選挙が北朝鮮の今後を左右

今後の北朝鮮の動向は、アメリカの次期大統領が誰になるかによってある程度決まってきます。
韓国の文大統領は北朝鮮融和政策をとり、板門店で自由に演説をしていいと招待されました。
しかし、これは2018年に韓国が全面的に北朝鮮支援を約束したからで、2年経った現在でも何一つ履行されていないことが今回の南北共同連絡事務所の爆破に出たという解説が一般的です。
この背景はアメリカが、もっと言えばトランプ大統領が北朝鮮の融和政策を韓国に許可しなかったというのが正解です。
アメリカの前回の共和党政権であるジョージ・W・ブッシュジュニアは北朝鮮を「悪の枢軸」と名指しし、トランプ大統領はシンガポールとハノイで金正恩と会談をしていますが、基本的には北朝鮮を信用していません。
民主党候補のバイデンが政権を取ったら?

クリントン・オバマ両民主党政権は北朝鮮に対して無策でした。
クリントン政権では前ブッシュ政権での強硬策を宥和政策に切り替えたために北朝鮮を生き永らえさせています。
西側に亡命してきた北朝鮮の元外交官は「あれを1年続けられたら北朝鮮は崩壊しただろう」とコメントしています。
オバマ前大統領に至っては、北朝鮮をなんの問題にもしませんでした。
つまり、トランプ政権が続けば時間の問題で北朝鮮は音を上げるでしょう。
片やバイデン政権となると、基本的に自分の意見がない人ですので、ブレーンの寡頭政治になり、民主党の伝統的な解決策、すなわち平和友好的な解決に向かう可能性が高いと言えます。
そして、クリントン、オバマ両氏同様にお金だけダマし取られ、結局北朝鮮が存続し続けることになるでしょう。
北朝鮮に核を廃棄させるのは不可能

北朝鮮に核兵器や核施設を放棄させるのは、絶対に無理な話です。
平和的な解決をするためには核兵器・施設の公開、査察、放棄が条件になりますが、北朝鮮はすべからく飲む道理がありません。
庶民の生活を犠牲にしてまでも、核関連施設に国家資金の約8割を投入しているといわれているくらいですから、放棄なんて選択肢はないのです。
これが失敗すれば金正恩政権は崩壊したも同じですから、経済封鎖で音を上げるのを待つほかありません。
バイデンかトランプか、次期アメリカ大統領は日本にとってはどちらがよいのか?
トランプ大統領が言うように何度援助してもダマされてきたのですから、バイデン民主党政権になってまた宥和を行ってもダマされるのは目に見えています。
日本にとってはトランプ続投の方がマシでしょう。
北朝鮮の祈り

横田滋さんの無念さは筆舌に尽くしがたいものがあります。
横田めぐみさんが拉致されたときは高英姫が金正日と結婚した数年後です。
となると金正恩の誕生に関わっている可能性が高く、生きているにしろ亡くなられているのにせよ、帰国の可能性は現体制では非常に難しいと言わざるを得ません。
今帰国できない拉致被害者は、金正恩の誕生と生母の関わりを知っていることが理由で帰国できない可能性があるということを一考に入れておく必要があるでしょう。
どちらにしても北朝鮮は、祈るような気持ちでバイデンの勝利を願っているでしょう。
北朝鮮にとってはトランプ続投では展望が見えないからです。